地鶏のだまこ鍋 鈴木アキラ レシピ監修

「だまこ鍋」は「きりたんぽ」と並ぶ北東北の名物料理で、「だまこ」とは「玉っこ(『こ』は東北弁によく使われる名詞の接尾語)」のこと。御飯を半練りにしてボール状に固めたものを使うことから、この名が付けられている。「きりたんぽ」も「だまこ」も炊きたての御飯をすり鉢で潰して半練りにするのだが、この半練り状態のことを実は「半殺し」と呼ぶ。知らない人が聞くと、じつにぶっそうな名前である。

新米で作った「だまこ」と地物の野菜との取り合わせは最高で、特にキノコ類から出たダシを吸った「だまこ」のうまさは格別。新米とキノコの出回る季節に是非作っていただきたい一品だ。

だまこは元々はマタギの携帯保存食として開発されたと聞く。時間をかけて表面を焼き固め、水分を極力飛ばした「だまこ」は携帯もしやすく、かびにくい。だまこ鍋のように汁物に入れて戻して食べるのが一般的なようだ。しかし、水分を飛ばして焼き固めた本式のだまこを作っていると、それだけで1日終わってしまうので、キャンプでは表面が色よく焼けた程度で十分だろう。それでも美味しさは十分に味わえる。

鶏はできれば丸ごと1羽、骨付きのものがあればベストだが、なければ骨付きを含めた様々な部位の肉を用意したい。骨付き肉は出汁の出方が全く違う。またブロイラーと地鶏では味の深さに格段の差がある。タイトルをわざわざ「地鶏の」としたのはそういう意味だ。

鍋料理にも蓄熱性の高いダッチオーヴンは最高の道具となる。風のある野外でも鋳鉄製の鍋は一度温まってしまうと、そう簡単には冷めたりしない。大人数には容量の多い12インチ、もしくは14インチのモデルがいいだろう。三叉(トライポッド)に吊るして調理すれば鍋料理としての雰囲気もいいし、何よりもチェーンの長さによって火力の調整も簡単に行なうことができる。
材料
・米約500g
・鶏肉各部 計1~1.5kg
・鶏挽肉 300g
・ハクサイ 4分の1
・長ネギ 2~3本
・水菜 4~5束
・ごぼう 2~3本
・キノコ(マイタケ、シメジ等)2~3パック
・揚げ豆腐 1個
・卵 1個
・鶏ガラスープ 大さじ1
・塩少々
・コショウ少々
作り方
1. まずは炊飯。米に対する水の量は立てた指1関節分、または押し付けた手のひらが隠れる程度。僕は手が分厚いので指で計っている。新米は水がやや少なめでちょうどいい。炊飯は最初からいきなり強火。沸騰し吹きこぼれてくるのを合図にこまめにニオイをかぐ。水蒸気に軽い焦げのニオイが混じってきたら火を弱めて1~2分炊く。
2. 火を止め、10分くらい蒸らしたら炊飯完了! 蒸気の穴(通称カニ穴)ができれていればベスト
3. 御飯が熱いうちにすり鉢で半練り状態にすりつぶす。これがいわゆる「半殺し」。野郎ども、かまわねえから半殺しにしちまいな!
4. 軽く塩を付けた手で丸める。半殺しにした御飯は手にくっ付くので時々手に水を付けつつ作業をする。
5. 「だまこ」の表面に焼き色が付くまで焼く。フライパンでも焼けないことはないが、できれば炭で網焼きにしたい。本来は表面全体がカチカチになるまで低温でじっくり焼くのだが、それでは1日がかりの作業になってしまう。
6. 鶏挽肉に卵と塩、コショウを混ぜ合わせて練り、鶏ボールの材料を作っておく。
7. 鶏ボールの表面を焼く。
8. 鶏肉の表面を軽く焼き付ける。煮崩れを防ぐのと、皮から脂を出してダシに旨味を出す両方の意味がある。
9. 鶏ガラで取ったスープがあればベストなのだが、なければお湯に鶏ガラスープの素を加えて、塩、コショウで味を整える。
10. 鶏ボールと揚げ豆腐を入れる。一度湯通しした鶏ボールとその湯通ししたスープを足すのもいい。肉類を最初に入れて出汁を出すのが目的。
11. 食べやすい大きさに切った野菜、その他をセットして煮込む。「だまこ」に味がしみるのがポイント。アツアツのうちに食べる! スープを吸った「だまこ」で口の中をヤケドをしないように注意のこと。だまこはたくさん作っておき、具材と共に足して食べる。
ワンポイント

【POINT】
・炊飯には水平出しが肝心。鍋が傾斜しているときちんと炊けない。皿を水準器代わりにして、きっちり燃焼器具の水平出しをすること。
・だまこを焼く際の焼き網は、しっかり熱してから焼き始めること。十分熱されていないと焦げ付きやすい。どうしても焦げ付くようなら焼き網に油を塗るのも手。
・表面を焼かずに乾かして固める方法もあるが、一手間かけたほうが香ばしくておいしいし、煮込んでも形崩れしにくい。
・炊飯、だまこ作り、そしてだまこを焼く作業には結構時間がかかる。少なくとも約1.5~2時間はみておくこと。
・半殺しにした米を割り箸などに棒状に練り付ければ「きりたんぽ」に、小判状に付ければ「御幣餅」になる。
・あまり長時間火にかけっぱなしにしたり、火からおろして置いておいたりするとダッチオーヴンから鉄の成分が染み出して、食材が黒くなってしまう。食べ残した分は他の鍋に移しておいた方がいい。

レシピ監修

鈴木アキラ

世界各地のおばあちゃんから、地元料理の作り方を教えてもらうのが大好きなアウトドアライター。
小学校低学年の頃から、タマネギを刻んでパスタソースを作るような凝り性であったが、今はとにかく「わかりやすい分量で、簡単に作れて美味いもの」しか、作りたくない野外料理人。
さらに「飲みながら作る料理が最高!」と思っている。「アウトドアで活躍! ナイフ・ナタ・斧の使い方」(山と渓谷社)をはじめとして、野外料理の著書も多数。

撮影
笠原 修一

今回使用した製品
  • キャンプオーヴン 12インチ Deep

    キャンプ用の脚付きのダッチオーヴンです。フタには炭を乗せられるようにふちが付いていてローストビーフやデザートの上火調整も可能です。12インチモデルより少し深くなってます。

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